
「物流2026年問題で荷主も義務化される」と聞いているものの、具体的に何から手を付ければ良いのか分からない――。そんな相談がここ1年、倉庫長や物流担当マネージャーから急に増えました。
改正物流効率化法は、トラック会社だけでなく荷主側のオペレーションを根本から見直す法律です。この記事では、2026年に向けて荷主がやるべきことを、現場の段取りレベルまで落として整理します。
この記事のポイント
- 物流2026年問題=「ドライバー不足+荷主への法的義務化」が同時に来る問題と整理できる
- 改正物流効率化法で、2025年4月から努力義務、2026年4月から特定事業者にはCLO選任・中長期計画・定期報告が義務化
- 荷待ち・荷役等は「1運行あたり合計2時間以内」が求められ、超過すれば短縮計画が必要
- 紙の受付簿では「誰が・何時に着いて・何分待ったか」を定期報告(様式第5)に使える形で残せない
- まずは荷待ち時間の実測データ化。そのうえでCLOの役割分担と社内の説明資料を整えるのが現実的な第一歩
物流2026年問題とは何か:荷主側から見た本質
「物流2026年問題」と聞くと、多くの方が「ドライバー不足が深刻化する年」とイメージされます。現場目線でいうと、もう少し具体的です。
2024年の時間外労働規制の本格適用で、トラックドライバーの残業時間に上限がかかりました。その影響が2年ほど遅れて物流の現場に波及し、「今までのやり方(待たせる前提の運行)」では運べなくなるのが2026年前後です。
ここに、改正物流効率化法の「荷主への義務化」が重なります。つまり、
- ドライバーの拘束時間を抑えなければならない
- そのために荷主も荷待ち時間・荷役時間を短縮しないといけない
- しかも、単なるお願いベースではなく法律上の義務として求められる荷主が出てくる
この三つが同時に来るのが物流2026年問題です。
私が以前いた物流会社では、繁忙期の朝一便で「着車7:00、実車9:30」という2時間半待ちがごく普通にありました。ドライバーはタコグラフ上、待機中も拘束時間です。これが制度として認められなくなる、というのが今の動きだと捉えてください。
改正物流効率化法で何が変わるか:2025年と2026年の違い
まず、スケジュール感を整理します。改正物流効率化法では、荷主・物流事業者に対して次のように段階的に義務が課されます。
| 時期 | 対象 | 法的な位置づけ | 求められる主な対応 |
|---|---|---|---|
| 2025年4月〜 | すべての荷主・物流事業者 | 努力義務 | 荷待ち時間など物流の効率化に向けた取り組み |
| 2026年4月〜 | 一定規模以上の特定事業者 | 義務 | CLO(物流統括管理者)の選任、中長期計画の作成、定期報告の提出 |
2025年4月からは、規模に関わらず「物流を効率化するよう努めなさい」という努力義務がかかります。ここでは罰則までは直ちに想定されませんが、国の方針は明確です。
そして2026年4月から、一定規模以上の荷主・物流事業者は「特定事業者」に指定され、次の3つが義務になります。
- CLO(物流統括管理者)の選任
- 物流の中長期計画の策定
- 定期報告(様式第5等)の提出
この特定事業者が、取組状況によっては勧告・命令の対象になる点が、従来と大きく異なります。運送会社にばかり指導が行っていた構図から、「荷主側にも直接メスが入る」構造に変わるということです。
注意
「うちは特定事業者に入らない規模だから、何もしなくて良い」と判断するのは危険です。取引先の大手荷主が特定事業者になれば、その中長期計画や定期報告のために、荷待ち時間データや改善の協力を求められる立場になります。元請け・下請けの関係に関わらず、サプライチェーンごとに効率化を進める流れは避けられません。
荷主に課される具体的な義務:CLO・中長期計画・定期報告
2026年4月から特定事業者として義務化される内容を、現場マネジメントの視点で整理します。
CLO(物流統括管理者)の選任と役割
CLO(Chief Logistics Officer)は、会社の物流全体を統括する責任者です。法令上の位置づけは「物流統括管理者」で、特定事業者は必ず1名以上を選任することになります。
現実的には、次のようなポジションの方が任命されるケースが多いはずです。
- 本社の物流部門長
- サプライチェーンマネジメント(SCM)担当役員
- 複数拠点を束ねる物流管理のシニアマネージャー
ただ「名前だけ」の選任では意味がありません。CLOには少なくとも以下の権限・業務が必要になります。
- 荷待ち時間・荷役時間など、各拠点のデータへのアクセス権
- 物流委託先(運送会社)との協議に出席し、運行条件を見直す権限
- 現場の改善案を経営会議に上げるルート
元物流会社の立場からいうと、「CLOにデータが集まらない体制」が一番危険です。各拠点が紙の受付簿と感覚値だけで運営していて、CLOは年に1回のアンケート集計だけ、という状態では定期報告も中長期計画も机上の空論になってしまいます。
中長期計画:荷待ち2時間を軸にしたKPI設計
特定事業者は、物流の効率化に関する中長期計画を作成することになります。ここで中心になるのが「荷待ち時間をどう短縮するか」という視点です。
計画の中身を現実的にするには、次のようなKPI(指標)設計が必要になります。
- 1運行あたりの荷待ち・荷役等時間の平均値
- 2時間を超えている運行の件数と比率
- 曜日・時間帯別のピーク(例:月曜午前の着車集中など)
- 運送会社別・車種別の傾向
たとえば、ある食品倉庫のデータを取ると、全体の平均荷待ち時間は80分でも、「月曜9〜11時着」は150分、「夕方の引き取り」は20分といった偏りが必ず出てきます。この偏りを見ずに「平均60分を目指す」と書いても、現場には伝わりません。
中長期計画で説得力を出すには、
- 現在値(実測データ)
- ボトルネックになっている時間帯・拠点
- そこに対して打てる施策(バース増設、予約制導入、受付体制の増員など)
- それによって何分短縮できる見込みか
ここまで落とし込む必要があります。
定期報告(様式第5など)と「勧告・命令」のリスク
特定事業者は、定期的に物流の状況を国に報告します。代表的なのが「様式第5」と呼ばれる定期報告で、CLOが責任を持って取りまとめることになります。
この定期報告には、荷待ち時間や荷役時間、トラックの到着・出発時間など、拘束時間に関わる情報が含まれます。ここでのポイントは、
- 形式だけの報告ではなく、改善の結果を見られる
- 取組が不十分だと判断されれば、勧告や命令の対象になり得る
という点です。紙の受付簿を後から集計して「だいたいこのくらいです」と報告する時代は終わりつつあります。
私が見てきた荷主・物流センターでも、「受付簿はあるが、誰も集計していない」「Excelに打ち直すのに毎月数日かかる」というケースが少なくありませんでした。定期報告が始まると、この手作業はまず回りません。しかも、数字に誤りがあれば説明責任を求められるのはCLOです。
荷待ち時間2時間ルール:現場オペレーションに何が起きるか
改正物流効率化法の実務上、最も影響が大きいのが「1運行あたりの荷待ち・荷役等時間を合計2時間以内に抑える」ルールです。
「1運行あたり2時間」のイメージを具体化する
ここでいう「荷待ち・荷役等時間」には、一般に次のような時間が含まれます。
- 到着後の受付待ち
- バース空き待ち
- 荷降ろし・積み込み作業
- 伝票処理・検品待ち
たとえばこんな運行を考えてみます。
- 7:00 倉庫到着・受付
- 7:00〜7:30 バース空き待ち(30分)
- 7:30〜8:20 荷降ろし(50分)
- 8:20〜8:35 検品待ち(15分)
- 8:35 出発
この場合、「荷待ち・荷役等時間」は30+50+15=95分です。2時間(120分)以内に収まっています。一方で、繁忙期の月曜朝によくあるのが次のようなパターンです。
- 7:00 倉庫到着・受付
- 7:00〜8:30 バース空き待ち(90分)
- 8:30〜9:30 荷降ろし(60分)
- 9:30〜10:00 検品待ち(30分)
- 10:00 出発
このケースでは、合計180分=3時間です。2時間ルールを1時間オーバーしています。
2時間を超えた場合は「短縮計画」が必要
法令上、「2時間超過=即違法」という単純な話ではなく、2時間を超えている場合には、その短縮に向けた計画の策定が求められる形になります。つまり、
- 現状、どの拠点・どの時間帯で2時間を超えているのか
- その要因は何か(バース数不足、人員配置、予約なしの集中など)
- いつまでに、どのレベル(例:2.5時間→1.8時間)まで短縮するのか
これを中長期計画と連動させて示す必要があります。
現場感覚でいうと、荷待ち時間の短縮は「10分刻みの積み上げ」です。一気に1時間短縮できることはほとんどありません。受付のピーク時間に1人増員する、予約時間を15分単位に刻む、曜日ごとに発注量を平準化する。こうした地道な改善を「どこからやるか」がCLOと現場の腕の見せどころになります。
対応の第一歩は「荷待ち時間の見える化」:紙の受付簿が限界な理由
改正物流効率化法への対応で、最初のハードルになるのが「荷待ち時間の実測データがない」ことです。対運送会社向けの協議資料も、CLOの定期報告も、数字がなければ始まりません。
紙の受付簿では定期報告に耐えない
多くの物流センターには、いわゆる「受付簿」があります。A4のバインダーに、
- 日付
- 車番
- 運送会社名
- ドライバー名
- 到着時刻
- 呼び出し時刻
などを書き込むものです。私も安全管理者時代、この受付簿をめくりながら「昨日は何台来ていたか」「朝のピークは何時か」をよく確認していました。
ただ、これを定期報告やCLOの月次レポートに使える形にするには、大きな壁があります。
- 人が手で書くため、読めない字・誤記・書き忘れが多い
- 「呼び出し時刻」は書いていても「バース接車時刻」「作業完了時刻」までは残していないことが多い
- 拠点ごとに様式がバラバラで、本社で集計するのに手間がかかる
- Excelに打ち直すだけで毎月数日〜1週間分の工数になる
法律対応の観点から見ると、「紙の受付簿しかない状態」は、
- 実態は把握しているが、証拠として整理できていない
- 勧告・命令が入ったときに、数字で説明できない
というリスクを抱えています。
荷待ち時間のデジタル計測がCLOの仕事を変える
改正物流効率化法の対応の第一歩は、「荷待ち時間を実測データで把握すること」です。ここをデジタル化してしまえば、CLOの仕事は一気に具体性を持ちます。
例えば、TCIが提供しているバース受付システム「ヨビトラ」では、トラックの到着から出発までの時間が自動で記録され、荷待ち時間が自動集計されます。CLOや物流部門は、
- 拠点ごとの平均荷待ち時間
- 曜日・時間帯・運送会社別の傾向
- 2時間を超える運行がどれくらいあるか
をボタン1つで確認できます。
さらに、CLOの月次レポートや定期報告(様式第5)に対応したシートをワンクリックで出力できるため、「紙の受付簿をかき集めてExcelに打ち直す」という非生産的な作業がなくなります。
ヨビトラは初期費用0円、月額9,800円(税別)から導入可能で、既存の倉庫にも後付けしやすい構成になっています。詳細な法対応のポイントについては、TCIの規制対応ガイド(/solution/logistics-2026-law/)でも解説しています。
荷主側の「初動チェックリスト」
- 自社が特定事業者に該当する可能性があるか、担当部門と確認した
- 全拠点で荷待ち・荷役時間を把握する仕組みがある(紙/デジタル問わず)
- 荷待ち時間を「運行単位」で集計できている
- 2時間を超えるケースが「どこで・どのくらい」発生しているか把握している
- CLO候補となる人材と役割(権限・時間)について社内で合意できている
- 定期報告(様式第5)に使える形式でデータを残す手段がある
よくある質問
物流2026年問題で荷主は今すぐ何をやるべきですか?
最優先は「荷待ち・荷役等時間の実態把握」です。特定事業者に該当するかどうかに関わらず、長時間の荷待ちが常態化している拠点があれば、ドライバー不足の加速とともに運送会社から運賃値上げや運行削減を迫られます。
少なくとも主要拠点について、
- 1運行あたりの荷待ち・荷役時間の平均
- 2時間超の運行の件数と比率
- ピーク時間帯
を3か月分程度、データで出せる状態を目指してください。そのうえで、CLO候補者の選定と、データを活用した改善の進め方を社内で議論するのが良い流れです。
紙の受付簿しかない現場でも、法対応は間に合いますか?
今から2026年までの期間を使えば、間に合わせることは十分可能です。ただし、紙のまま運用し続けて、後から人手で集計するやり方は現実的ではありません。
おすすめの進め方は、
- まず1〜2拠点だけでも、デジタルで荷待ち時間を取れる仕組みを入れてみる
- 3か月程度のデータを取り、ボトルネックを洗い出す
- その結果をもとに、中長期計画や他拠点への展開案を作る
というステップです。ヨビトラのように工事不要で後付けできるツールであれば、既存の受付フローを大きく変えずに試験導入できます。
CLO(物流統括管理者)にはどんな人を選ぶべきですか?
肩書きだけで選ぶのではなく、「物流の全体像が分かり、現場とも話ができる人」が望ましいです。具体的には、
- 複数拠点の入出荷オペレーションを理解している
- 運送会社との運行条件の交渉経験がある
- データを読んでKPIを設定し、改善の優先順位を付けられる
といったスキルがあると、CLOとして機能しやすくなります。経営層に直接レポートできる立場であることも重要です。逆に、現場を知らないスタッフ部門だけに任せると、「きれいな計画書だが現場では回らない」状態になりかねません。
まとめ
- 物流2026年問題は、ドライバー不足と改正物流効率化法による荷主への義務化が同時に押し寄せる構造的な問題である
- 改正物流効率化法により、2025年4月からは全荷主に努力義務、2026年4月からは特定事業者にCLO選任・中長期計画・定期報告の義務が課される
- 1運行あたりの荷待ち・荷役等時間は合計2時間以内が求められ、超過している場合は短縮に向けた計画が必要になる
- 紙の受付簿だけでは、荷待ち時間の実態把握や様式第5などの定期報告に耐えるデータを残すことが難しい
- 対応の第一歩は、荷待ち時間のデジタル計測と見える化。CLOが実効性ある計画を立てるための土台づくりが、2026年に向けた最大のカギになる
TCIは、フォークリフトやトラック向けの安全カメラで培った現場ノウハウをもとに、荷待ち時間の自動集計とCLO月報・定期報告(様式第5)対応シートのワンクリック出力ができるバース受付システム「ヨビトラ」を提供しています。初期費用0円・月額9,800円(税別)から導入でき、既存の倉庫にも工事不要で後付けできます。改正物流効率化法への対応方針に悩まれている荷主・物流事業者の方は、まずは貴社の現状ヒアリングからご相談ください。お問い合わせは 06-6151-3697 または当社サイトのお問い合わせフォームまで。



