
「物流2026年問題で『荷主にも義務』と言われても、具体的に現場で何を変えればいいのか分からない」――多くの工場長や物流担当者から、同じ声を聞きます。
この記事では、改正物流効率化法で荷主に課される義務を、CLO選任から荷待ち2時間基準まで、現場の仕事に落とし込んで整理します。
この記事のポイント
- 物流2026年問題と改正物流効率化法で「荷主に何が起きるか」を整理
- CLO(物流統括管理者)に実際どんな業務が乗るのかを具体的に解説
- 荷待ち時間「2時間以内」基準を守るためのデータの取り方と現場改善の進め方
- 紙の受付簿がNGになる理由と、定期報告(様式第5)に耐える記録の要件
物流2026年問題とは何か|改正物流効率化法で荷主に起きる変化
「2024年問題」に続いて語られる「物流2026年問題」は、ドライバー不足や長時間労働といった構造課題に対し、荷主にも踏み込んだ義務がかかるタイミングを指して使われています。
その中心にあるのが「改正物流効率化法」です。ポイントを現場での影響という観点で整理すると、次の3つになります。
- 2025年4月:すべての荷主・物流事業者に「物流の効率化」の努力義務がかかる
- 2026年4月:一定規模以上の「特定事業者」に対して、CLO選任・中長期計画・定期報告が義務化
- 取組が不十分と判断された特定事業者は、行政から勧告・命令の対象になりうる
つまり、これまでは「協力しましょう」で済んでいたことが、規模の大きい荷主から順に「義務」として問われる段階に入ります。
工場長や物流部門として避けて通れないのが、次の2つです。
- CLO(物流統括管理者)を誰にするか、その人に何をさせるか
- 荷待ち時間・荷役時間をどう測定し、2時間以内に抑えていくか
ここを曖昧にしたまま「そのうち本社が方針を出すだろう」と待っていると、2026年4月に間に合いません。CLOに指名されるのは、現場をよく知っている課長クラスであることが多く、その人材が新しい報告業務と改善業務を同時に抱えることになります。
特定事業者に課される義務|CLO・中長期計画・定期報告を現場の仕事に落とし込む
改正物流効率化法で「特定事業者」に指定されると、次の3つが義務になります。
- CLO(物流統括管理者)の選任
- 物流の中長期計画の策定
- 毎年の取組状況の定期報告
法令用語で聞くと遠い話に感じますが、現場レベルの仕事に直すとイメージがしやすくなります。
CLO(物流統括管理者)に実際乗ってくる業務
CLOは「物流担当役員」のような響きがありますが、実務を担うのは多くの場合、現場責任者クラスです。典型的には、物流企画部門のマネージャーや工場・センター長クラスが候補に挙がります。
そのCLOに乗ってくる業務を、現場で想定されるタスクに分解すると次のようになります。
- 自社の物流実態の把握(荷待ち時間・積卸し時間・積載率など)
- 改善が必要な取引先・拠点の優先順位付け
- 荷主側の工程(検品・入荷処理・バース配分など)の見直し提案
- 運送事業者・倉庫業者との協議・調整
- 中長期計画の作成と、社内稟議・経営層への説明
- 毎年の定期報告のとりまとめ(いわゆる「様式第5」対応)
この中で時間がかかるのは、改善そのものではなく「実態把握」と「数字のとりまとめ」です。特に、荷待ち時間や荷役時間を紙の受付簿で管理している拠点では、CLOの初仕事が「Excelへの転記作業」になりがちです。
中長期計画と定期報告は「一度きり」では終わらない
中長期計画は、単に作って終わりではなく、毎年の定期報告で「どこまで進んだか」が問われます。ここでポイントになるのが、次の2点です。
- 荷待ち・荷役時間を継続的に計測できているか
- 改善の前後で数字がどう変わったかを示せるか
行政が求める定期報告(様式第5)も、形式としては一覧表ですが、中身は「どの拠点で・どのような取組を・いつから行い・どれだけ効果が出たか」という履歴です。改善の内容よりも、「数字として説明できているか」が問われます。
注意
CLOの任命だけを先に済ませ、データ基盤の準備を後回しにすると、初回の定期報告期限直前に「数字が出せない」という事態になりかねません。特に拠点数の多い荷主は、早い段階で計測方法の標準化を決めておく必要があります。
荷待ち時間「1運行2時間以内」の意味|どこからどこまでを測るか
改正物流効率化法では、1運行あたりの「荷待ち・荷役等時間」を合計2時間以内に抑えることが求められています。超過している場合には、短縮計画を立てて取り組む必要があります。
ここで現場からよく出るのが、次のような疑問です。
- 「2時間」とは、どこからどこまでを指すのか
- 荷待ちと荷役を分けて記録しないといけないのか
- 往路と復路の両方を足すのか
実務上は、少なくとも次の時間を把握しておくと、CLOの管理や定期報告にも耐えられるデータになります。
- 到着時刻(ゲートイン時刻)
- バース着・作業開始時刻
- 荷役完了時刻
- 出発時刻(ゲートアウト時刻)
このうち、「到着~作業開始」が荷待ち時間、「作業開始~作業完了」が荷役時間です。多くの現場では、合計時間(到着~出発)で2時間を超えているパターンが目立ちます。特に、午前中に到着便が集中する食品・日用品のセンターでは、到着から作業開始まで1~2時間待ちという事例も珍しくありません。
ある食品系メーカーのセンターでは、朝9時台に大型車が10台以上連続して到着し、バースは3~4本しかないという状況でした。その結果、受付から実際の荷下ろし開始まで平均90分、ピーク時は2時間超え。ドライバーからのクレームだけでなく、2026年以降は「計画的な短縮」が求められる水準です。
ここで重要になるのが、「感覚値」ではなく「実測データ」です。担当者が「うちはせいぜい1時間程度」と感じていても、実測すると1時間半~2時間というケースは、現場ではよくあります。到着と作業開始の時間を5台分だけ手書きしてみたら、想像以上にばらつきがあった、という経験をされた方も多いはずです。
紙の受付簿では耐えられない|定期報告(様式第5)に必要なデータとは
改正法対応の第一歩は、「荷待ち時間を実測データで把握すること」です。ただし、ここで紙の受付簿だけに頼っていると、次のような問題に直面します。
- 筆跡が読めず、あとから入力できない
- 時間の書き漏れ・押し忘れが多い
- ドライバーが混雑時に記入を後回しにしてしまい、正しい時刻が残らない
- 拠点ごとに書式がバラバラで、CLOがデータを集約できない
- 記録が紙のバインダーで棚に積まれるだけで、集計に使えない
定期報告(様式第5)で求められるのは、「1年分を振り返って、どの程度荷待ち時間を短縮できたか」といった変化の説明です。そのためには、少なくとも次のような単位で集計できるデータが必要になります。
- 月別の平均荷待ち時間・荷役時間
- 曜日別・時間帯別の傾向
- 拠点別・荷主別(共同倉庫の場合)の比較
- 改善施策の前後での変化
紙の受付簿を見返して、これらを手集計しようとすると、1拠点あたり数日単位の作業になります。拠点が10・20と増えてくると、CLOひとりの手には収まりません。
| 記録方法 | 定期報告への活用しやすさ | 現場の負担 | よく起きる問題 |
|---|---|---|---|
| 紙の受付簿 | 低い(手入力・集計が必須) | 記入は軽いが、集計時の負担が大きい | 記入漏れ・読めない字・バラバラな形式 |
| Excel入力 | 中程度(形式を揃えれば集計可) | 受付担当の入力時間が増える | 入力待ちの行列・誤入力・ファイルの分散 |
| システム自動記録 | 高い(集計・出力が容易) | 初期に運用ルールを決めれば日々の負担は小さい | 機器トラブル時のバックアップルールが必要 |
物流現場を10年以上見てきた感覚で言うと、「紙+人力集計」で2026年以降の定期報告までやり切れるのは、単一拠点・少量案件に限られます。複数拠点を持つ製造業や流通業の荷主であれば、どこかのタイミングで「自動記録」に切り替えないと、CLOと現場担当者が集計作業に追われることになります。
最初の一歩は「測る」こと|荷待ち時間を短縮する現場改善の進め方
では、荷待ち時間を2時間以内に抑え、さらに短縮していくには、現場として何から始めればよいのでしょうか。ポイントは、次の3ステップです。
チェックリスト
- 到着~出発までの時刻を、自動または半自動で記録できているか
- 月次で「どの時間帯・どの便種が遅れているか」を把握できているか
- バース数や人員で対応すべき問題なのか、予約・受付の運用で改善できるのかを切り分けているか
- 運送事業者と「見える化したデータ」を共有し、運行計画の調整まで踏み込めているか
ステップ1:記録方法を決める
最初の一歩は、「どのタイミングで」「誰が」「何を記録するか」を決めることです。紙の受付簿を完全にやめる必要はありませんが、少なくとも次の2つは電子的に残る形にしておくと、後々の定期報告で助かります。
- 到着(ゲートイン)時刻
- 出発(ゲートアウト)時刻
バース着や荷役開始・終了時刻は、余力があれば追加でデータ化します。最初から完璧を目指して現場に負担をかけるより、「まず到着~出発の合計時間を把握する」ことを優先した方が、改善の打ち手は見えやすくなります。
ステップ2:偏りを見つける
1~3か月分のデータがたまったら、「時間帯別」と「曜日別」で集計してみます。すると、次のような傾向が見えてきます。
- 午前中の特定の時間帯だけ2時間を大きく超えている
- 月曜日・連休明けだけ平均時間が跳ね上がっている
- ある運送会社の便だけ、到着時刻が集中している
この「偏り」が見えると、改善の打ち手も具体的になります。例えば、ある化学品メーカーの倉庫では、午前9~11時台の入荷便に荷待ちが集中していましたが、データを運送会社と共有し、出荷工場側の積込時間を30分前倒ししてもらうことで、センターの到着が11~13時台に分散。平均荷待ち時間が30分以上短縮したケースがあります。
ステップ3:設備投資が本当に必要かを見極める
荷待ち時間の問題が表面化すると、「バースを増設しよう」「人員を増やそう」という話になりがちです。しかし、データを見ていくと、1日のうち2~3時間だけ極端に混んでいる一方で、それ以外の時間帯はバースが空いている、というパターンも多くあります。
この場合、まず検討すべきは次のような運用改善です。
- 時間帯別の持ち込み枠の設定とドライバーへの事前案内
- 荷主内の生産・出荷スケジュールの見直し(集中出荷の緩和)
- 事前予約制システムや番号札方式による受付の平準化
- セット品・混載品の事前ピッキングで、バース滞留時間を短縮
こうした運用改善は、いずれも「数字を根拠に説明できるかどうか」が鍵になります。CLOが経営層や生産部門に協力を求める場面でも、「この時間帯に、これだけの台数が2時間を超えています」というグラフや一覧があるかどうかで、会議の空気は大きく変わります。
荷待ち時間の自動集計と様式第5対応|TCI「ヨビトラ」を使った実務イメージ
ここまで見てきたように、改正物流効率化法への対応でネックになるのは、「荷待ち時間の実測データを、定期報告に使える形で残すこと」です。
株式会社TCIでは、この課題に対して、トラック受付・バース管理システム「ヨビトラ」を提供しています。
- ゲートイン・ゲートアウトの時刻を自動で取得し、荷待ち時間を自動集計
- CLO向けの月次レポートを、ワンクリックで出力
- 改正物流効率化法の定期報告に用いる様式第5対応シートも、同様に出力可能
- 初期費用0円、月額9,800円(税別)から導入可能で、小規模拠点から試せる
紙の受付簿やExcel入力では、どうしても「記録は残るが、集計に時間がかかる」という状態になりがちです。CLOが本来注力すべきなのは、数字を作る作業ではなく、その数字をもとにした改善の議論と社内調整です。
TCIは、フォークリフト・トラック・クレーン向けのAIカメラや安全カメラを10年以上にわたり現場に提供してきたメーカーで、工事不要の無線カメラなど「後付けで現場に馴染ませる」ことを得意としています。ヨビトラも同様に、現場の業務フローを大きく変えずに、受付の記録だけを自動化するイメージで導入できます。
改正物流効率化法の具体的な要件や、ヨビトラの画面イメージを含む詳細な解説は、TCIの規制対応ガイド(物流2026年問題対応ガイド)にまとめています。CLO候補の方や、これから社内で対応方針を検討されるご担当者は、稟議資料づくりの素材としてご活用ください。
よくある質問
物流2026年問題で荷主はいつまでに何をやっておくべきですか?
2025年4月からはすべての荷主に努力義務、2026年4月からは特定事業者に義務がかかります。時期にかかわらず、現場としては少なくとも次の3点を2025年度中に進めておくと、2026年度のスタートが楽になります。
- 到着~出発時刻の記録方法を決め、1か所でもよいので試験運用を始める
- 月次で荷待ち時間を集計し、2時間を超えている時間帯・便種を特定する
- CLO候補者を決め、必要な権限(他部門との調整権限など)を整理する
この3つができていれば、特定事業者に指定された際も、中長期計画や定期報告の土台づくりが進んだ状態でスタートできます。
紙の受付簿しかない状態でも定期報告(様式第5)は出せますか?
理論上は、紙の受付簿からExcelなどに手入力して集計すれば、定期報告に必要な数字を出すことは可能です。ただし、1日数十台が出入りする拠点では、1年分を入力・集計するのにかなりの工数がかかります。
また、紙には「時間の書き漏れ」「判読不能」「記入忘れ」が多く、完全なデータとして残っていないこともよくあります。こうした記録の欠落は、定期報告の作成だけでなく、行政からのヒアリングや社内説明の際にも説明が難しくなります。
現実的には、2025年度のどこかのタイミングで、到着・出発時刻だけでも電子的に自動記録できる仕組みへの移行を検討された方が、CLOや現場担当者の負担は大きく下がります。
CLO(物流統括管理者)にはどの部署の誰を充てるのが適切ですか?
組織によって異なりますが、次の条件を満たす人材が望ましいと考えています。
- 物流の現場と、本社の両方の事情を理解している(どちらか一方だけではなく)
- 生産・販売・調達など他部門と、数字をベースに交渉できる
- 一定の権限を持ち、改善施策に必要な投資や人員配置を提案できる
多くの企業では、物流企画部門のマネージャー、ロジスティクス本部の課長クラス、あるいは主要センターのセンター長が候補になります。CLO本人が全ての集計作業を行う必要はなく、現場の担当者やシステムに集計を任せ、CLOは「データをどう活かすか」に専念できる体制を作ることが現実的です。
まとめ
- 改正物流効率化法により、2026年4月から一定規模以上の特定事業者にCLO選任・中長期計画・定期報告が義務化される
- 1運行あたりの荷待ち・荷役等時間を合計2時間以内に抑えることが求められ、超過している場合は短縮計画が必要になる
- 対応の出発点は「荷待ち時間を実測データで把握すること」であり、紙の受付簿だけでは定期報告(様式第5)に使える形のデータが残りにくい
- 到着・出発時刻の自動記録と、月次の集計・可視化を早期に整えることで、CLOは数字づくりではなく改善と社内調整に時間を使える
- TCIのヨビトラは、荷待ち時間の自動集計とCLO月報・様式第5対応シートのワンクリック出力に対応し、初期費用0円・月額9,800円(税別)から導入できる
改正物流効率化法と物流2026年問題は、「知っていれば準備できたのに」というテーマです。荷待ち時間の実測データを残し始めるだけでも、2026年以降の対応余力は大きく変わります。TCIでは、ヨビトラのデモや、貴社拠点に合わせた運用イメージのご相談を承っています。具体的な運用イメージを持ったうえで社内稟議を進めたい方は、06-6151-3697 またはサイトのお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。



