
目次
「簡単に解除できる装置」がもたらした重大インシデント
― ガイドラインが求める“安全設計”とは何か ―
2025年9月、岐阜県大垣市の認定こども園で、2歳の女児が通園バス車内に約1時間置き去りにされる事案がありました。
幸い体調に異常はありませんでしたが、この出来事は「置き去り防止装置」の設計と運用に関する重要な課題を改めて考えさせるものとなりました。
国交省ガイドライン4.6項が示す原則
国土交通省が定めるガイドラインでは、以下のように明確に規定されています。
4.6. 置き去り防止を支援する装置は、運転手等が容易に作動を停止できないように設計されたものでなければならない。
さらに、ガイドラインの解説には次のように記されています。
「マニュアルが意図せず遵守されない等のヒューマンエラーを補完するという本装置の目的を踏まえれば、運転手等が容易に当該装置の作動を停止することができる設計を許容することは適切ではない。」
つまり、「容易に停止できる構造」は、装置の安全目的と矛盾する可能性があるという考え方が示されています。
(出展:送迎用バスの置き去り防止を支援する安全装置の ガイドライン)
「容易に停止できる」設計が抱えるリスク
現場の利便性を考慮して、ボタンを押さずに解除できるリモコン機能や、運転席付近で停止操作が行える設計の装置も存在します。
これらは、車検や給油などの特定の作業時に便利な側面もありますが、一方で、運転手が車両後部まで移動して安全確認を行う行動を省略するおそれも指摘されています。
このような状況を踏まえ、ガイドラインでは「確認行動を確実に伴う設計」が推奨されています。
重要なのは、装置が「確認を行わせる仕組み」を備えているかどうかです。
ガイドライン適合の鍵は「物理的確認の強制」
子どもの安全を確保するための装置は、単に便利さを追求するものではなく、**“確認を必ず行わせる仕組み”**である必要があります。
そのため、ガイドラインでは「容易に停止できない設計」が求められています。
株式会社TCI「SOS-0006」の設計思想
その考え方に基づき、**株式会社TCIの「SOS-0006」**は、ガイドラインの趣旨に沿った設計を採用しています。
- リモコンやスイッチによる停止機能を持たない構造
→ 意図しない停止や、運転席側からの解除を防止 - 必ず車両最後部まで移動して停止操作を行う必要がある設計
→ 車内全体の安全確認を物理的に促す - ヒューマンエラー防止に重点を置いた設計思想
→ 「今回は大丈夫だろう」という思い込みを排除
このように、「SOS-0006」は、装置の本来目的である「確認行動の確実な実施」を支援する構造となっています。
今こそ確認を
次のような機能を備えた装置をご使用の場合は、
ガイドラインとの整合性を一度ご確認いただくことをおすすめします。
- リモコンなどで遠隔解除が可能
- 運転席付近のスイッチで容易に停止できる
- 最後部まで行かなくても解除できる
装置の目的は「便利さ」ではなく、「命を守る確実な行動」を支援することにあります。
この原則を改めて見直すことが、悲しい事故を防ぐ第一歩となります。
結びに ― 「安全」は不便さの中にある
置き去り防止装置は、園児の命を守る最後の砦です。
多少の手間があっても、「必ず車内を歩いて確認する」という行動を確実に促す設計こそが、本当の安全を実現します。
今回の事案は、「便利さ」と「安全」のバランスを改めて考えるきっかけとなりました。
園や事業者の皆さまには、装置の設計・運用を今一度見直し、ガイドラインの目的に沿った安全な運用体制の構築をご検討いただきたいと思います。