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はじめに:車両盗難の深刻な現状
犯人はあらかじめ狙いを定めて下調べをし、犯行の機会を窺っているのが車両盗難の現実です。2024年の最新データでは、第1位はトヨタのランドクルーザーで、2024年上半期だけで590台が盗難被害に遭いました。また、車の盗難被害は2003年をピークに徐々に減っているものの、いまだに全国で年間5,000件以上(2021年)の被害が起きていますという状況が続いています。
このような現状を踏まえ、本記事では車両盗難の「前兆」となる犯人の下見行動について詳しく解説し、一般のドライバーが被害を未然に防ぐための具体的な見抜き方をご紹介します。
参考:令和7年3月生活安全企画課自動車盗難等の発生状況等について

車両盗難の基本的な流れと下見の実態
令和4年に発生した自動車盗難は5,734件。うち4,291件は、車の近くに鍵がないのに被害にあった「キーなし」です。この「キーなし」による盗難は計画的な犯行であり、必ず事前の下見が行われています。
車両盗難は一般的に以下の段階を経て実行されます:
- 実行段階 – 実際の盗難行為
- ターゲット選定段階 – 高額車種や需要の高い車両の特定
- 下見・調査段階 – 対象車両の駐車環境、オーナーの行動パターン調査
- マーキング段階 – 実行準備としての目印付け
犯人が行う下見行動の具体例

車両盗難犯は、計画的かつ組織的に行動します。彼らは決して行き当たりばったりで犯行に及ぶわけではなく、事前に綿密な調査を行い、成功の確率を高めてから実行に移します。ここでは、実際に確認されている犯人の下見行動について詳しく解説します。
駐車場・駐車環境の調査
犯人が最も重視するのは、犯行現場となる駐車場や駐車環境の調査です。この段階で、彼らは犯行の成功率とリスクを慎重に評価します。
時間帯別の調査
- 平日・休日の駐車パターンの観察
- オーナーの出勤・帰宅時間の把握
- 夜間の警備状況や人通りの確認
環境面の調査
- 防犯カメラの設置状況と死角の確認
- 街灯の明るさや見通しの良さ
- 周辺住民の生活パターン
街灯の明るさや見通しの良さも重要な要素です。作業しやすい程度の明るさがありながら、周囲から発見されにくい環境を求めます。また、周辺住民の生活パターンも観察対象となり、早寝早起きの家庭が多いか、夜型の住民が多いかなども把握します。
車両の詳細調査
セキュリティ機器の確認
- イモビライザーの有無
- カーアラームの設置状況
- ハンドルロックなどの物理的防犯グッズ
車種・年式の特定
- 盗難しやすい車種かどうかの判断
- パーツの需要や転売価値の評価
ターゲット車両そのものの調査も欠かせません。この段階で、盗難の難易度と必要な準備を決定します。
オーナーの行動パターン調査
日常的な行動の観察
- 通勤時間や外出パターン
- 長期不在になる可能性(出張、旅行など)
- 家族構成や生活リズム
最も時間をかけて行われるのが、車両オーナーの行動パターン調査です。この情報により、犯行の実行タイミングが決定されます。
危険な前兆サイン:マーキングの実態

マーキングとは
狙った車にマーキング!?窃盗犯が残す自動車盗難の4つのサインとして注目されているのがマーキング行為です。これは犯人が実行前に対象車両に目印を付ける行為で、以下のような形で現れます。
具体的なマーキング手法
1. 粘着テープやシール
- ドアハンドル付近への小さなテープ貼付
- ナンバープレート周辺への目立たないシール
- サイドミラーへの印付け
これらは最も一般的なマーキング手法で、犯人にとって簡単に付けられ、かつオーナーが気づきにくいという特徴があります。特に透明テープや車体と似た色のシールが使用されることが多く、日常的な洗車時でも見落としがちです。
2. チョークやマーカー
- タイヤやホイール部分への印
- ボディ下部への小さなマーク
- 駐車場の地面への印
チョークによるマーキングは雨で消える可能性があるため、犯人は比較的短期間での実行を予定している場合に使用します。地面への印は車両移動の有無を確認する目的もあり、オーナーの行動パターン把握に利用されています。
3. 物理的な目印
- ワイパーに挟まれた紙片
- 車両周辺に置かれた小物
物理的な目印は、他のマーキング方法と組み合わせて使用されることが多く、特定の情報(実行日時や担当者など)を示すサインとして機能します。一見すると偶然置かれたゴミのように見えるため、多くのオーナーが見過ごしてしまうのが現状です。
下見行動を見抜くための観察ポイント

不審な人物の特徴
行動パターン
- 同じ場所に長時間滞在
- 特定の車両を執拗に観察
- 写真撮影や記録を取る行為
- 複数人でのチームワーク的な動き
服装・持ち物
- 目立たない服装での出現
- 帽子やマスクでの顔隠し
- スマートフォンやカメラでの記録
- 小型工具類の携帯
時間帯・タイミング
危険な時間帯
- 深夜から早朝(2-5時)
- 平日昼間の住宅街
- 週末の商業施設駐車場
継続的な観察
- 数日間にわたる同一人物の出現
- 定期的な巡回パターン
- オーナーの不在を狙ったタイミング
環境的な変化
駐車場の異常
- 普段いない車両の駐車
- 見慣れない人物の徘徊
- 防犯カメラへの異常な関心
最新の盗難手口と対応策
主要な盗難手口
1. リレーアタック スマートキーが多くの車両に採用されてから、車両盗難の主流となったのが「リレーアタック」です。この手口では、車のスマートキーから常時発信されている微弱電波を受信して、犯人が使える状態にする手口です。
2. CANインベーダー 最新の手口として注目されているのがCANインベーダーで、車両の電子制御システムに直接アクセスして盗難を行う方法です。
3. コードバスター 従来のイモビライザーを無効化する装置を使用した盗難手口です。
効果的な対策方法
物理的対策
- ハンドルロックの使用
- タイヤロックの設置
- 車両用金庫の設置
電子的対策
- 電波遮断ポーチの使用
- 追加セキュリティシステムの導入
- GPS追跡装置の設置
環境的対策
- 定期的な駐車場所の変更
- 明るい場所での駐車
- 防犯カメラのある駐車場の利用
被害を発見した場合の対処法

immediate Action(即座に行うべき行動)
警察への通報(110番)
- 盗難被害の報告
- 現場保全の依頼
保険会社への連絡
- 車両保険の適用確認
- 必要書類の準備
関係機関への届出
- 陸運局への盗難届
- 信販会社への連絡(ローン残債がある場合)
車両盗難を発見した瞬間から時間との勝負が始まります。まずは冷静になって110番通報を行い、盗難の状況と現在地を正確に伝えることが最重要です。
予防のための日常的な心構え
定期的なチェック
- 車両周辺の異常確認
- マーキングの有無チェック
- 駐車環境の安全性評価
コミュニティとの連携
- 地域防犯活動への参加
- 近隣住民との情報共有
- 駐車場管理者との連絡体制構築
警察への通報後、速やかに加入している保険会社に連絡し、車両保険の適用範囲と必要な手続きを確認します。盗難証明書などの必要書類についても事前に把握しておくことで、スムーズな保険手続きが可能になります。
新世代盗難防止装置「ブラックセキュリティ」の登場

ここまで、車両盗難の前兆、“犯人の下見行動”とその見抜き方について解説してきました。
どれだけ防犯対策を講じても、盗まれやすい車を選んでしまえば、その効果は限定的です。
そこで、株式会社TCIでは、こうした現実を踏まえ、車両本体の防犯性を高める次世代型の盗難防止製品「ブラックセキュリティシステム」を現在開発いたします。
盗まれるを防ぐことに注力した次世代型盗難防止装置の詳細は近日中に公開予定ですので、どうぞご期待ください。

まとめ:前兆を見逃さない重要性
車両盗難は必ず前兆があります。犯人はあらかじめ狙いを定めて下調べをし、犯行の機会を窺っているという事実を踏まえ、以下のポイントを心に留めておくことが重要です:
- 継続的な観察の重要性 – 数日間の変化に注意を払う
- 小さな異常の重要性 – マーキングや不審な人物の存在
- 環境への意識 – 駐車場所や時間帯への配慮
- 予防策の実践 – 複数の対策を組み合わせる
現代の車両盗難は高度に組織化され、計画的に実行されています。特に、高級車や人気車は狙われやすいので、盗難対策を欠かさず行いたいところです。日頃からの注意深い観察と適切な対策により、大切な愛車を守ることができます。不審な兆候を発見した場合は、躊躇せずに警察や関係機関に相談することをお勧めします。
車両盗難の最新手口や効果的な対策、盗難保険などについては、以下の関連記事で詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。